
石元泰博
YASUHIRO ISHIMOTO
2025年秋冬シーズンおよび、2026年春夏シーズンのコラボレーション相手となったのは、写真家・石元泰博(1921-2012)。
石元泰博は、アメリカ・サンフランシスコに生まれ、3歳の頃に来日し高知県に暮らした。17歳で再び渡米し太平洋戦争下の日系人収容所内で仲間たちに習って写真をはじめ、戦後、シカゴのインスティテュート・オブ・デザインで本格的に写真を学び再び来日。雑誌への掲載や個展開催などを通じて認知を広げていった。太平洋戦争を挟んでアメリカと日本を往来する思春期を過ごし、しばらくは日本国籍を持たなかった石元が、日本で活動をしていくにあたり桂離宮や伊勢神宮、曼荼羅などをモチーフとして選び取っていったのは、自分の内にある「日本的」なるものへの関心を外へと向けていったことの現れとも考えられる。
同様に、ALMOSTBLACKデザイナーの中嶋峻太もパリへの留学経験を通じて外からの視点を得て、デザイナーとして「日本的」なものを探求してきた。したがって、ALMOSTBLACKのアートとファッションのコラボレーションにおける「日本的」なものの探求が石元の表現に向かうのは必然とも言える。
初期の石元の作品を特徴づけているのは、彼が学んだバウハウス流の造形思考。バウハウスの教員であったモホイ=ナジが校長を勤めたインスティテュート・オブ・デザインはニュー・バウハウスとも呼ばれ、具象的な世界から抽象的な「かたち」を切り取る造形写真を教えた。写真における造形思考は、写真家が世界のなかに発見したかたちを切り取り、それを強調することによって表現される。石元の作品では、今回のコレクションでTシャツにパッチとして用いられている《シカゴ 雪と車》(1948-52)などが造形写真の典型的な例であり、この教育の実践と言っていいだろう。雪が積もった車の2つのタイヤを横から切り取り、その全体像や周辺情報は排して「かたち」のリズムで楽しませる写真である。
石元の平面的な造形力からインスピレーションを受け、今シーズンは和服に寄せたパターン構成を採用しており、これは中嶋による石元の写真への平面性への応答というだけでなく、日本的なファッションの平面性という特徴に改めて光を当てるものである。また、作品イメージのプリントやパッチだけでなく、桂離宮や伊勢神宮の作品における造形の輪郭からインスピレーションを受け、そのかたちをパターンとしてトップスやシャツに表現している。加えて、今回は、石元が好んで使用した4×5インチの大判カメラ(「シノゴ」と言われる)の比率を衣服にも用いている。
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